2020年06月30日18時00分 発表
本日、第146回火山噴火予知連絡会において、前回(第145回、令和元年12月24日)以降の全国の火山活動について以下のとおり評価を行いました。
また、参考として気象庁が発表している噴火警報・予報(噴火警戒レベル)についても併せてお知らせします。
【火山活動の状況】
桜島
南岳山頂火口では活発な噴火活動が続いており、広域のGNSS連続観測では、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部で長期にわたり供給されたマグマが蓄積された状態が継続しています。2019年9月頃から、桜島島内での山体の膨張・隆起や姶良カルデラの地下深部の膨張を示す地盤変動が観測されていましたが、桜島島内の変動については4月頃から概ね停滞しています。南岳山頂火口では、爆発回数は減少傾向にあるものの火山灰の噴出量に大きな変化はなく、爆発規模が大きくなる傾向がみられ、規模の大きな爆発が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中
口永良部島
口永良部島では2020年1月から2月にかけて、大きな噴石や火砕流を伴う噴火が時々発生しました。新岳火口直下の火山性地震は3月までは多い状態で経過し、その後は少ない状態で経過しましたが、3月下旬からは口永良部島周辺や新岳西側山麓において、時々地震が発生しています。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は多い状態です。2月頃から新岳火口の熱活動も高まってきています。これらのことは、今後噴火活動がさらに活発化する可能性を示唆します。
GNSS連続観測では、島内の基線において、2019年10月頃からわずかな伸びがみられ、1月頃から明瞭な伸びとなっています。このことから、地下ではマグマが蓄積されつつあると推定されます。その蓄積量は2015年噴火発生前の状態に匹敵します。また、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が多い状態も地下でのマグマ活動の活発化を示します。
2019年10月以降の火山活動は、2018年から2019年の火山活動と同程度以上で推移しており、2014年から2015年に匹敵する火山活動に発展する可能性も考えられます。
口永良部島では、規模の大きな噴火に先行して、山麓での大きな地震の発生、新岳火口直下における火山性地震の増加、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量の減少などの現象がみられることもあるため、火山活動の推移には注意が必要です。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中
西之島
2019年12月6日に噴火の再開が確認されて以降、山頂火口からの噴火と山腹からの溶岩の流出が続いており、噴火活動は活発な状態です。6月中旬以降は、大量の火山灰を噴出するなど特に活発な噴火が確認されました。噴火活動は、2013から2015年、2017年及び2018年と同様に、山頂火口とその周辺で活発に継続しています。
地表面温度は、2017年の噴火活動よりも高い状態が継続し、5月下旬以降は更に上昇する傾向が認められます。
2019年12月以降の溶岩噴出率は、2013年から2015年及び2017年の噴火活動を上回る規模であり、6月中旬以降急激に増加し、これまでで最大になっていると考えられます。
今後も、溶岩の流出や大きな噴石及び火山灰噴出を伴う活発な噴火活動が継続する可能性が高く、海への溶岩流入による陸地拡大が継続すると考えられます。
【参考】火口周辺警報(入山危険)発表中
草津白根山
白根山(湯釜付近)では、1982年から1983年にかけて小規模な水蒸気噴火を繰り返しましたが、その後の火山活動はおおむね静穏に経過していました。しかし、2011年5月に火山性微動と傾斜変動が観測された後、2014年及び2018年には、湯釜付近の浅部に火山性流体の一時的な供給の増加によると考えられる火山性地震の増加や浅部の膨張などがみられました。さらに、GNSS連続観測でも、草津白根山の北西から西側の深部の膨張を示唆する変化が繰り返し観測され、それらは現在も収縮に転じていません。また、本白根山では、2018年に水蒸気噴火が発生しました。
以上のことから、草津白根山の火山活動は、中長期的にみると活発な状態になっています。草津白根山浅部の活動だけではなく、草津白根山の北西もしくは西側の地殻変動や周辺の地震活動にも注意していく必要があります。
白根山(湯釜付近)
白根山(湯釜付近)の火山活動は、2018年以降、高まった状態が継続していましたが、湯釜付近の浅部の地震活動や膨張を示す傾斜変動に低下傾向がみられています。しかしながら、地震の回数は増減を繰り返すなど地震活動は現在も継続しており、湯釜湖水の一部の成分濃度には明瞭な低下傾向がみられていないなど、湯釜付近の浅部の熱水活動はやや高い状態が続いていると考えられます。引き続き、小規模な水蒸気噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
本白根山
鏡池北火口付近のごく浅部を震源とするごく微小な地震は徐々に減少し、2018年12月以降少ない状態で経過しています。鏡池北火口の北側の火口列からの噴気は観測されていません。火山活動は、現在のところ静穏な状態ですが、逢ノ峰付近では時々地震が発生しており、引き続き火山活動の推移に注意する必要があります。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中
浅間山
2019年10月以降、火山活動は静穏に経過しましたが、2020年6月20日頃から浅間山の西側での膨張を示すと考えられる傾斜変動が継続し、山体浅部を震源とする火山性地震が増加しています。また、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量の増加や火口底温度の上昇も認められています。浅間山では火山活動が高まっており、今後、小噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
阿蘇山
中岳第一火口では2019年4月の噴火以降、断続的に噴火活動が継続していますが、噴出率は2020年2月下旬以降、低下しています。噴出物には新しいマグマに由来した物質が多く含まれていましたが、その割合は減少傾向にあります。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は多い状態で推移していましたが、3月頃から減少傾向がみられています。火山性微動の振幅は、2019年12月から2020年2月中旬にかけてはやや大きな状態で経過しました。2月下旬以降は概ね小さな状態で推移しましたが、5月中旬に一時的に大きな状態となるなど、火道の状態の不安定を示唆する現象が観測されました。中岳第一火口では、火映や赤熱現象が見られる等、火口内の熱活動は高まった状態でしたが、5月中旬頃から低下しています。しかし、湯だまりを形成するには至っていません。GNSS連続観測では、深部にマグマだまりがあると考えられている草千里を挟む基線の伸びは停滞しています。このように、火山活動に低下傾向はみられるものの、やや高まった状態で経過しており、今後も噴火活動が継続する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
霧島山
広域のGNSS連続観測では、霧島山の深い場所でのマグマの増加を示すと考えられる基線の伸びは2019年2月以降停滞しています。新燃岳では2018年6月28日以降、噴火は観測されていませんが、2019年11月頃から新燃岳火口直下を震源とする火山性地震が増減を繰り返すなど、火山活動が高まった状態となっています。
霧島山深部には、これまでに多量のマグマが蓄積されていると考えられ、広範囲の地震活動も続いていることから、火山活動の推移を引き続き慎重に監視する必要があります。
えびの高原(硫黄山)周辺
硫黄山では、2018年4月27日以降、噴火は発生していません。噴気活動は活発な状態が続いていますが、2019年1月以降はその領域のさらなる拡大は認められません。硫黄山付近では、火山性地震は少ない状態で経過しています。GNSS連続観測では、硫黄山近傍の基線の伸びは2019年2月頃から概ね停滞しています。硫黄山では、現時点では噴火の兆候は認められませんが、火山活動の推移には留意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中
新燃岳
新燃岳では2018年6月28日以降、噴火は発生していませんが、2019年11月頃から新燃岳火口直下を震源とする火山性地震が増減を繰り返しています。また、火口西側斜面の割れ目付近において地熱域のわずかな拡大や噴気活動の再開が認められ、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が増加するなど、火山活動が高まった状態となっています。一方で、地殻変動のデータに特段の変化がみられていないことから、現在のところ規模の大きな噴火に至る可能性は低いと考えられます。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
御鉢
御鉢の火山活動に特段の変化はなく、現時点では噴火の兆候は認められませんが、火山活動の推移に留意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中
薩摩硫黄島
4月29日に噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上1,000mまで上がりました。噴火の前後で地震活動等に特段の変化はありませんが、夜間に火映が観測され、時折噴煙が高くなるなど、長期的には熱活動が高まった状態が続いています。硫黄岳火口周辺では、噴火に警戒する必要があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
諏訪之瀬島
4月28日から29日にかけて噴火活動が活発化しました。それに先駆けて、GNSS連続観測では、2019年12月頃から2020年3月頃に島内の基線でのわずかな伸びがみられ、また、西側海域での地震活動の活発化及び火山ガス(二酸化硫黄)の放出量の増加がみられました。この間に地下から供給されたマグマが浅部へ移動し、噴火活動の活発化に至ったと推定されます。
御岳(おたけ)火口では長期的に噴火を繰り返しており、今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されます。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
十勝岳
2006年以降継続していた山体浅部の膨張を示す地殻変動は2017年秋頃からほぼ停滞しているものの、山体浅部が膨張した状態は維持されています。火山性地震の一時的な増加、火山性微動や火山性地震と同期した傾斜変動は引き続き観測されており、振子沢噴気孔群や62ー2火口では地熱域の拡大や火口温度の上昇が確認されています。火山活動の活発化を示唆する現象が観測されていますので、今後の活動推移には注意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中
焼岳
山頂付近では、微小な地震が継続して発生しており、また、緩やかな膨張が続いているとみられます。中長期的に焼岳の火山活動は高まってきており、今後の火山活動の推移に注意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中
【防災上の警戒事項等】