【火山情報】

2020年12月23日18時00分 発表

本日、第147回火山噴火予知連絡会において、前回(第146回、令和2年6月30日)以降の全国の火山活動について以下のとおり評価を行いました。
また、参考として気象庁が発表している噴火警報・予報(噴火警戒レベル)についても併せてお知らせします。

【火山活動の状況】
桜島
南岳山頂火口では、活発な噴火活動が続いていましたが、7月頃に活動が低下しました。しかし、火山ガス(二酸化硫黄)の1日あたりの放出量は、8月頃から増加傾向がみられ、GNSS連続観測では2019年9月頃から、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部の膨張を示す地盤変動が続いています。姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部では長期にわたり供給されたマグマが蓄積した状態と考えられることや、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量の増加傾向がみられることから、8月以降、非常に緩やかな火山活動の活発化傾向が続いており、南岳山頂火口を中心に、噴火活動が再び活発化する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中

口永良部島
新岳火口では、8月29日にごく小規模な噴火が発生しましたが、それ以降、噴火は観測されていません。5月頃まで増加傾向が続いていた火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、6月頃から減少傾向がみられます。新岳西側山麓付近の火山性地震は6月以降発生していません。GNSS連続観測では、2019年10月頃からの島内の基線の伸びは、5月頃から停滞していますが、新岳火口周辺では、8月頃までわずかな膨張を示す地殻変動がみられました。
地下の新たなマグマの蓄積はみられず、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が減少傾向であることから、規模の大きな噴火の可能性は低下していると考えられます。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中

西之島
2019年12月から噴火が継続している西之島では、6月中旬以降、溶岩流出と大量の火山灰噴出を伴う活発な噴火が確認されました。その後、7月に入り溶岩流出は減少し、噴火活動は火山灰噴出が主体となって8月まで継続しました。
上空や海上からの観測及び気象衛星ひまわりの観測では、8月下旬以降、噴火は確認されていません。また、西之島付近の地表面温度も低下し、8月以降は周囲とほとんど変わらない状態となっています。火山活動は低下しているものの、山頂火口内に噴気や高温領域が確認されており、噴火が再開する可能性があります。
なお、今回の噴火活動で陸地拡大や火砕丘の急激な成長が認められ、2019年12月以降の溶岩噴出率は、2013年から2015年と同程度か、それを上回る規模であったと考えられます。
【参考】火口周辺警報(入山危険)発表中

草津白根山
白根山(湯釜付近)では、2011年に火山性微動と傾斜変動が観測され、2014年からは湯釜付近の浅部に火山性流体の著しい供給の増加によると考えられる火山性地震の増加や浅部の膨張などが観測され、2018年にも同様の変動が一時的にみられました。
また、2014年以降、草津白根山の北西から西側では深部の膨張を示唆する変化や地震の増加が観測されたほか、2018年には本白根山で水蒸気噴火が発生しました。
以上のように、草津白根山の火山活動は中長期的には活発な状態です。草津白根山の浅部の活動だけではなく、北西から西側の深部の地殻変動や周辺の地震活動の推移にも注意が必要です。

白根山(湯釜付近)
湯釜付近の浅部の地震活動や膨張を示す傾斜変動に低下傾向がみられており、2018年以降高まった火山活動は、引き続き低下傾向にあると考えられます。しかしながら、わずかな傾斜変動や湯釜北側噴気地帯のガス成分の変化がみられるなど、湯釜付近の浅部の熱水活動は現在も継続していると考えられ、引き続き、小規模な水蒸気噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中

本白根山
鏡池北火口付近の地震は2018年12月以降少ない状態で、噴気や地熱域も認められておらず、火山活動は静穏な状態で経過しています。なお、逢ノ峰付近では時々地震が発生しており、引き続き今後の火山活動の推移に注意する必要があります。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中

浅間山
山体浅部を震源とする火山性地震は、増減を繰り返しており、浅間山の西側での膨張を示すと考えられるわずかな地殻変動も継続しています。噴煙量は11月頃から減少傾向が認められますが、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は6月の活発化前と比べて多い状態です。
浅間山では、火山活動が高まった状態が続いており、今後も小噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中

薩摩硫黄島
硫黄岳では、10月6日にごく小規模な噴火が発生しました。噴火の前後で地震活動等に特段の変化はありませんでした。夜間に火映が観測され、時折噴煙が高くなるなど、長期的には熱活動が高まった状態が続いていることから、硫黄岳火口周辺では、噴火に警戒する必要があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中

諏訪之瀬島
御岳(おたけ)火口では、活発な噴火活動が続いています。諏訪之瀬島では、引き続き地震活動、熱活動が認められ、長期的に噴火を繰り返していることから、今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生すると予想されます。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中

十勝岳
2006年から2017年秋頃にかけて山体浅部が膨張し、その状態が現在も維持されています。火山性地震の一時的な増加、火山性微動や火山性地震と同期した傾斜変動は引き続き観測されており、振子沢噴気孔群や62ー2火口では地熱域の拡大や高温の状態が確認されているなど、火山活動の活発化を示唆する現象が観測されていますので、今後の活動推移には注意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中

霧島山
硫黄山では、5月頃から浅部の膨張を示すわずかな地殻変動が認められます。新燃岳では2018年6月28日以降、噴火は観測されていませんが、2019年11月頃から新燃岳火口直下を震源とする火山性地震が増減を繰り返すなどの火山活動がみられています。霧島山の深い場所でのマグマの蓄積を示すと考えられる地殻変動は2019年2月以降停滞していますが、深部にはこれまでに多量のマグマが蓄積されていると考えられ、広範囲の地震活動も続いていることから、火山活動の推移には注意が必要です。

えびの高原(硫黄山)周辺
硫黄山では、2018年4月27日以降、噴火は発生していません。噴気活動は活発な状態が続いています。火山性地震は、2020年5月以降、わずかに増加した状態が継続しています。5月頃から浅部の膨張を示すわずかな地殻変動が認められます。
硫黄山では現時点で噴火の兆候は認められませんが、今後、火山性地震の増加や地殻変動等が認められた場合には、火山活動が活発化する可能性があります。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中

新燃岳
新燃岳では2018年6月28日以降、噴火は発生していません。2019年11月頃から新燃岳火口直下を震源とする火山性地震の一時的な増加や、火口西側斜面の割れ目付近で地熱域の拡大と噴気活動の再開、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量のわずかな増加といった火山活動の高まりが認められました。その後は、地震活動は低下傾向となり、地熱域、噴気活動、火山ガスの放出量に変化はありません。また、霧島山の深い場所でのマグマの蓄積を示すと考えられる地殻変動は停滞しています。
これらのことから、現在のところ噴火に至る可能性は低いと考えられますが、今後、火山性地震の増加や地殻変動等が認められた場合には、火山活動が活発化する可能性があります。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中

御鉢
御鉢の火山活動に特段の変化はなく、現時点では噴火の兆候は認められませんが、火山活動の推移に留意が必要です。
【参考】噴火予報(噴火警戒レベル1、活火山であることに留意)発表中

【防災上の警戒事項等】