2021年12月27日18時00分 発表
本日、第149回火山噴火予知連絡会において、前回(第148回、令和3年6月30日)以降の全国の火山活動について以下のとおり評価を行いました。
また、参考として気象庁が発表している噴火警報・予報(噴火警戒レベル)についても併せてお知らせします。
【火山活動の状況】
桜島
南岳山頂火口では、2021年5月頃から噴火活動が低下し低調な状態となっていますが、2021年9月以降わずかな活発化の傾向が認められています。
火山ガス(二酸化硫黄)の1日あたりの放出量は、やや多い状態で推移しています。
桜島島内の傾斜計及び伸縮計では、2021年9月13日から山体の隆起・膨張を示すわずかな地盤変動が観測されていましたが、10月中旬以降は停滞しました。しかし、11月以降再びごくわずかな変動が観測されています。
GNSS連続観測では、桜島島内の山体隆起・膨張を示す変動は、2020年4月頃から停滞しています。一方、姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部におけるマグマの蓄積を示すと考えられる基線の伸びは2021年6月頃から停滞していましたが、10月頃から再び伸びが認められています。
姶良カルデラ(鹿児島湾奥部)の地下深部では長期にわたり供給されたマグマが蓄積した状態と考えられることや、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量が多い状態が続いていること、桜島島内地下へのマグマの供給を示すと考えられる地盤変動も観測されていることから、現在噴火活動がみられる南岳山頂火口を中心に、噴火活動がさらに活発化する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中
諏訪之瀬島
御岳(おたけ)火口では、2020年10月下旬以降、長期的に噴火活動が活発化しています。
2021年6月、9月や12月など、短期的な噴火活動のさらなる活発化がみられました。これらの短期的な活発化時に、ナベタオの傾斜計で西上がりから西下がりとなる変化が観測されました。この変化は諏訪之瀬島西側のやや深部へのマグマの蓄積と御岳火口直下へのマグマの上昇を示唆していると考えられます。また、火口中心から1km前後まで飛散する大きな噴石を多数観測しました。
2021年7月以降、噴煙の高さが火口縁上3,000mを超える噴火が複数回発生しています。
地震活動と地殻変動では、2020年9月以降、やや深部のマグマだまりへの多量のマグマの蓄積を示すような変化は認められていません。
諏訪之瀬島では、長期的に噴火を繰り返していることから、今後も火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル3、入山規制)発表中
西之島
8月14日に噴煙高度が火口縁上1,900mの噴火が確認され、その後も火山灰の放出が認められています。また、山頂火口からの噴気活動が継続し、山頂火口内や火砕丘北側には高温領域が確認されています。これらのことから、引き続き、小規模な噴火が発生する可能性があります。
また、2013年以降活動期と休止期を繰り返していることを考慮すると、今後、火山活動がより活発化する可能性も否定できません。
【参考】火口周辺警報(入山危険)発表中
福徳岡ノ場
8月13日から15日にかけて大規模な海底噴火が発生しました。噴煙高度は16,000m以上に達しました。8月15日には新島が確認されました。新島が確認されたのは1986年以来です。また、この噴火に伴い、大量の噴出物(軽石)が浮遊しているのが、確認されました。8月16日以降は、噴火は確認されていません。
福徳岡ノ場の過去の活動履歴を考慮すると、今後数十年程度は今回のような大規模な噴火の可能性は低いと考えられますが、気泡の湧出や変色水域が確認されるなど、活発な火山活動が継続しており、今後も噴火の可能性があります。
【参考】噴火警報(周辺海域)(周辺海域警戒)発表中
阿蘇山
中岳第一火口では、2021年10月13日から火山性微動の振幅が増大し、14日に噴火が発生しました。18日からは火山性微動の振幅がさらに増大し、20日に火砕流を伴う噴火が発生しました。10月21日以降、噴火は観測されていません。
火山性微動の振幅は噴火後小さくなりましたが、10月の振幅増大前と比べると大きな状態で経過しています。
火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は10月の噴火以降、多い状態が続いており、また、GNSS連続観測では、2021年9月頃から、草千里付近の膨張を示すと考えられる基線の伸びが認められています。これらのことから、今後も中岳第一火口の周辺に影響を及ぼす噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
薩摩硫黄島
火山性地震や火山性微動の発生状況に特段の変化はありません。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は1日あたり1,000トン前後の状態が継続しており、時折噴煙が高くなるほか、夜間に火映を観測しています。長期的には熱活動が高まった状態が続いていることから、硫黄岳火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
口永良部島
新岳火口では、2020年8月30日以降、噴火は観測されていません。火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、2021年1月以降は1日あたり概ね100トン未満で経過していましたが、6月以降はさらに減少し、概ね50トン以下と少ない状態となっています。火山性地震はやや多い状態です。GNSS連続観測では、2021年2月頃からみられていた基線の縮みの傾向は5月頃から停滞しています。2021年12月に実施された水準測量でも2021年5月の結果と比較して特段の変化は認められませんでした。
火山ガス(二酸化硫黄)の放出は少ないながらも継続しており、火山性地震もやや多い状態が続いていることから、引き続き火口周辺に影響を及ぼす程度の噴火が発生する可能性があります。
【参考】火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)発表中
【防災上の警戒事項等】